イ・ボムス、冷徹なサルスを魅力的なキャラクターに作り上げるまで

※この記事にはドラマのストーリーに関する内容が含まれています。

イ・ボムス、冷徹なサルスを魅力的なキャラクターに作り上げるまで

“悪役の全盛期”と言われるほど、魅力的な悪役が数多く登場している。単に悪行を犯して主人公と対立するだけの悪役を越え、悪役だけの魅力とカラーがキャラクターに加わっている。映画「神の一手」のイ・ボムスも同じだ。彼は小さな温もりすら感じられない冷徹なサルスを、とても魅力的なキャラクターに作り上げた。映画を見ていると、自分でも知らないうちに驚いて感嘆の声が出るほど、イ・ボムスは強烈な印象を観客の心に残す。イ・ボムスはチョン・ウソンとは反対の場所で「神の一手」を背負っていた。

このように魅力的なサルスのキャラクターが誕生したのは、イ・ボムスが注いだ努力の結果だ。全身を覆っているタトゥーも圧倒的な悪役の雰囲気を出すために考えた彼のアイデアだ。「本当に悪人のようだった」という記者の言葉に、イ・ボムスは「嬉しい」と明るい笑顔を浮かべる。彼が聞きたかった映画の感想がまさにそれだった。今回のインタビューでは、絶対悪のキャラクターを作り上げるためのイ・ボムスの努力をうかがうことができた。

―非常に疲れているようだ。それでも映画の反応が良いから、心は嬉しいのではないだろうか。(イ・ボムスは現在出演中のドラマ「トライアングル」の徹夜の撮影を終えて、インタビューに応じた)

イ・ボムス:そうだ。シナリオを読んで、作品を選んで、様々な過程を経て、映画は公開される。完成した映画を見た時に、毎回シナリオで受けた印象以上のものが見られると嬉しいが、そうじゃない場合もある。今回は映画を見た時、シナリオを読んだ時に感じた以上のものが見れて、内心ほっとした。それだけ、一般の観客はどんな風に映るのか楽しみだ。

―映画の全体的な印象ではなく、自分のキャラクターだけを考えた場合はどうだったか?

イ・ボムス:気に入っている。なぜなら、撮影しながら常に頭の中から離れずストレスを受けた考えの一つが「悪役のように見えなければならない」ということだった。悪いキャラクターに見えないと、たとえ演技が上手くても意味がない。また、サルスは映画で緊張感を生み出さなければならず、常に緊張感を漂わせることが必要だった。そんな部分にたくさん気を使ったためか、映画を見る観客に緊張感を与えていると感じた。だから、気に入ったと言える。

―意図した通り、サルスは本当に悪いキャラクターに見えた。

イ・ボムス:嬉しい(笑) 以前、ドラマ「チャクペ-相棒-」で悪役を演じたが、それと同じだと言われてはいけないと思っていたからだ。その時も一生懸命に演じて愛されたが、いずれにせよまた違う悪役を斬新に演じなければならないと思った。そのため、それを乗り越えて素敵に演じたいという意欲が湧いてきた。監督とたくさん話し合って、撮影現場で集中した結果、「チャクペ-相棒-」とは違う悪役になったようで、またほっとすることができた。

―悪役は本当に久しぶりだが、実際に悪役を提案されること自体が少ないと思う。今回、悪役のオファーが来た時、どう思ったのか聞きたい。

イ・ボムス:時期的にも相性がいいと思った。その頃に出演した作品を見ると、優しい役か少しノーマルなキャラクターが多かった。その後、刺激的なキャラクターを提案されたのが「神の一手」だ。そろそろ違う雰囲気のキャラクターを演じたいとちょうど思っていた時だったので、やっと新しい悪役を演じられる作品に出会ったと思った。俳優はみんな、自分の演技をたくさん披露できる作品やキャラクターが好きだと思う。

―これまで演じてきた役もあり、外見的にも善良なイメージが強いが、悪役を演じる時の自分だけのノウハウや秘訣はあるのか?

イ・ボムス:そうだな。演技はマニュアルのようにすでに決まったボタンを押せば出てくるものではないので、はっきりこれと表現するのは難しい。僕の顔にも善良な一面や鋭い一面など、様々な面があると思う。簡単に言えば、怖くて強烈な印象の顔を持つサルスのキャラクター作りが簡単だったのかもしれない。だが、僕は色んな顔を持っているので、ずっと集中して役に入り込み続ける必要があった。下手をすると全く違うキャラクターになるかもしれないと思ったからだ。

―悪役を選ぶ俳優は普通“理由のある悪役”を表現したいとよく話す。しかし、サルスは特別な理由もなく、ただ“悪”そのものとして存在する。演技する立場としては、キャラクターが悪人になった理由を持っているかどうかによって違いが生まれるのか?

イ・ボムス:違いは俳優によって変わると思う。「神の一手」の場合は娯楽映画なので、役作りが気楽な方だった。リアリズムを追求するストーリーではないので、より気楽に、大胆に演じることができた。また、観客もそんなサルスを柔軟に受け入れてくれるだろうと思った。より詳しく説明することもできたが、サルスだけはよく分からない人物として描きたかった。よく分からない人物だからこそ、観客は面白いと思うだろうし、映画の流れも面白くなると思った。下手して説明を間違えると、お決まりの悪役になってしまう。どう演じるかは俳優の選択だが、そういう意味で今回の作品はそんな風に演じたかった。

―今話したように、サルスは絶対悪のように見える。過去にどんな人物だったのか全く説明がない。

イ・ボムス:僕が悩んだことを話すと、実はサルスの事情を間違えて入れたら、通俗的なキャラクターになるかもしれないという心配があった。サルスは何を考えているのかよく分からないキャラクターであって、それをさらに強調して全体的に分からない不吉なキャラクターに作り上げたかった。そんな意図に相応しいキャラクターに上手く表現できたと思う。

―先ほど、絶対悪のキャラクターに見せるための悩みやストレスがあったと話したが、その感情を表現することは難しくなかったのか? 俳優は映画を撮影する間、自分のキャラクターの感情を保つとよく言うが。

イ・ボムス:正解はない。俳優各自のタイプによって違うと思う。過去に学校で演技を学んでいた時は、もし自分がある役を演じることになったら、日常生活でもその人物として生きなければならないと教わった。それで、そう生きてみた時期があった(笑) 例えば、ホームレスのキャラクターを演じる時は、3~4ヶ月間ホームレスとして暮らして、殺人犯のキャラクターなら3~4ヶ月、殺人犯として暮らした。だが、今考えてみると、そうやっていると日常生活が上手く過ごせない。

―感情的にはどうなのか? 深刻になったり、憂鬱になったりすることもあると思う。

イ・ボムス:それも正解はないと思う。もう少し真面目に話すと、演じる時はその役に入り込んでいても、日常では役に入ってはいけないと思う。それでは、生活がバランスを失ってしまいそうだからだ。もちろん、いつでも(役に)入る感情は維持しなければならない。俳優は撮影現場で瞬間的な集中力と爆発力のあるエネルギーが必要だと思う。そして、僕もそんなタイプだと思う。そのエネルギーは日常で消耗されることもない。また、日常でのイ・ボムスとカメラの前のイ・ボムスは違う。常に役に入っていた昔を思い出す。学生時代はよくそうだった(笑)

―全身のタトゥーは自身のアイデアだと聞いた。確かに圧倒的な雰囲気だった。しかし、嫌悪感も抱いて驚いた。体そのものでは強烈な印象を与えにくいため、タトゥーを選んだのかなとも思った。

イ・ボムス:そうとは限らない(笑) サルスという人物が服を着ていても着ていなくても悪人に見えるように努力した。一瞬も温もりが感じられない人物にしたかった。葛藤も、躊躇いもなく、氷のように冷たいエネルギーが感じられる人物になりたかった。そんな意味で、タトゥーは異質感と嫌悪感を与えるかもしれないと思った。また、街のチンピラのようなタトゥーを考えたわけではない。他にも傷や火傷なども考えたが、それは効果があまり大きくないだろうと思った。

―全身タトゥーは描くのも消すのも大変だったと思う。

イ・ボムス:20時間以上の作業だった。その間は横になることも、座ることもできない。だから、タトゥー模様の肌色のTシャツを着ようかと考えたこともある(笑) 3人がタトゥーの扮装を担当してくれたが、実際にそのうち2人はタトゥーアーティストだった。

―どんな絵が描かれているのか?

イ・ボムス:日本のヤクザのような感じのタトゥーだ。“美”的なタトゥーというより、日本のヤクザの間で見られるような、より殺伐として冷たさが感じられるものというか。だから、そのデザインを選んだ。

―サルスを除いて一番魅力的だと思うキャラクターは?

イ・ボムス:その質問の答えになると思うが、アン・ソンギ先輩の演技が本当に素晴らしかった。チュニムが車で死ぬ姿を見て、全身に戦慄が立つほどだった。目を開けたまま盲人の演技をすることに魅力を感じていて、チャンスがあればやってみたいと常に思っている。

―サルスの組織は暴力団だ。しかし、賭け碁だけで組織の運営が可能だろうかという突飛な質問が浮かんだ。賭け碁に関する知識が多くないからそう思ったのかもしれない。

イ・ボムス:きっとゲームマネーが大きいのだろう(笑) 賭け碁がどれほど大きく行われているのか知らないが、中国はその市場が大きいと聞いた。とにかく賭け碁というのは詐欺の賭博だから、当然黒い集団が関与するだろうし、数億ウォン、数十億ウォンがかかった賭博の場合はさらに興味を持つだろうと思った。そんなアプローチだった。

―マスコミ試写会後の記者懇談会でアクションに関する質問が出た時、面白い答えを準備したと聞いたが、その答えとは?

イ・ボムス:僕にとっては新鮮な答えという意味だ。サルスの性格と人生はテソクのものと全く違う。このように違う2人がぶつかるということが興味深いと思った。もしテソクとサルスが同じ正統派なら、それもそれなりに興味深いだろうが、テソクは正統派でサルスは変則派だからその2人の違いから生まれる興味があると思う。テソクは力が強いが、サルスは非常に素早い剣使いだ。力が強い人と速い人の対決だからこそ、より興味深くなる。これを映画「トロイ」の一シーンに例えると、2つの国が戦う時に片方からは巨大な人が、違う方からはブラッド・ピットが出てくる。誰が見ても巨大な人が勝ちそうなのに、その予想を破ってブラッド・ピットが素早く走り出してあっという間に相手を殺す。そんなシーンからインスピレーションを受けた。

―チョン・ウソンとは3度目の共演だ。そして、以前「太陽はない」で対決したことを覚えている。そういえば、イ・シヨンとも「怪盗ホン・ギルドン一族」で呼吸を合わせた。

イ・ボムス:嬉しかった。お互いが成長してから久しぶりに会って、またカメラの前で息を合わせることになったので、胸がいっぱいになった。当事者だけが分かち合えるものがある。それぞれ成長した姿で会って、一つの作品に向けて一生懸命に取り組むのが嬉しいという話をウソンさんと交わした。お互い熱心に頑張って生きてきたと思う。

―もし続編が出ても、これ以上サルスの出演はない。確かに映画のエンディングは続編を期待させるが。

イ・ボムス:「釜山(プサン)に行こう」と言って終わる。続編が出るのかと監督に聞いたが、ないと言われた。ただ疑問を与えるための興味深い装置だったという。もし反応が良かったら続編はどうするのかと聞いたら、続編を撮影することになれば、過去に関する話を撮りたいと言っていた。

―ところで、休むことなく活動しているようだが。

イ・ボムス:そうだ。妻も「本当に不思議だ」と言う。何かが一つ入ってきたら、過去の何かが一つ抜けていかなければならないのに、抜けていくことなくただ積み重なっていくだけだからだ。妻はそんな僕が好きだと言った。僕は一度集中すると没頭するタイプだ。3~4年前のことだが、当時機会があって美術展示会を行ったことがある。6人の画家と一緒に行った展示会で、僕は計5点を出品することにした。3点は以前描いておいたもので、2点は展示会のために新しく描かなければならなかった。でも、絵を描くことがなかなかできず、締め切りが迫ってきた。これは妻も驚いたエピソードだが、ある日、夕方に絵を描き始めて18時間ずっと絵を描く部屋にいた。トイレにも行かなかった。それだけ、絵に没頭していた。その時もたぶん作品に出演していたと思う。だからずっと絵を描くのを延ばしていたんだと思う。

―美術作品の結果はどうだったのか?

イ・ボムス:2点を販売した。そして、処女作はあまり売らないと聞いた。結婚の招待状も自分で描いた。模範事例の招待状として、業界のレジェンドになっている(笑)

―イ・ボムスにしかできない特有の笑いのコードがあるが、最近はそんな姿を全く見せてくれない。「スーパースター★カム・サヨン」や「オー!ブラザーズ」「重量★ガールズ キングコングを持ち上げろ!」のような作品は、ヒットしたかどうかとは関係なく、子供がもう少し大きくなったらぜひ見せたい作品だと、以前インタビューで話していた。実際、それらの作品はイ・ボムスの出演作のうち好きな作品として挙げられる。そして、それがイ・ボムスにしかできない演技だと思う。

イ・ボムス:意識しているわけではない。優しくて正義感溢れるキャラクターをよく演じてきたので、演技に対して少し物足りなさを感じていたようだ。そんな時にサルスに出会ったから、よりぐっと来た。コメディはまたいつでも演じられる。「人生は美しい」を見たら、非常に面白くて存在感があって、感動も受ける。様々なキャラクターやジャンルが好きだ。演技自体が面白い作業だから、自由に演じたい。

―最近、出演作の成績が芳しくない。映画もドラマもそうだ。残念な気持ちが少しあると思う。

イ・ボムス:残念だ。それは一つの原因のためではなく、複合的な理由があるだろう。俳優は演技力を十分に発揮したいと考えている。野生馬が本能で走りたがるのと一緒だ。だが、僕が最近出演してきた作品のキャラクターや俳優として演技を繰り広げてきた活動空間的な面では、少し狭かったと思う。だから、僕自身がきっともどかしさを感じただろうし、存分に演技を披露できる空間を望んでいたのだろう。そんなことから来る残念さが一番大きい。サルスに出会って、やっと存分に与えられた空間で演じることができたと思った。

―そういう意味で「神の一手」のより大きな成功を期待する。

イ・ボムス:常にヒットを飛ばしてきた俳優でも期待はする。僕たちが上手くやることだけでなく、競争相手が上手くないことも必要だからだ(笑)

記者 : ファン・ソンウン、写真 : ク・ヘジョン、翻訳 : ナ・ウンジョン