チュ・ジンモがおすすめする「自分の中の感性を引き出す映画たち」

チュ・ジンモがおすすめする「自分の中の感性を引き出す映画たち」

写真=TENASIA

非の打ちどころがない外見は、俳優にとってある時点までは翼になるが、またある時点からは限界にもなる。イケメン俳優を挙げろと言われれば、すぐ名を呼ばれそうなチュ・ジンモは、イケメン俳優たちの登竜門と思われていた滋養強壮剤のCMで比較的早く名前を知られることになったが、人々は彼がどれほど演技に真剣なのかということよりも、どこでも目立つ顔に注目した。

「外見ですか? 毒になり得ますね。僕にとっては最初から翼ではなく毒でした(笑) 始めた頃から誰々に似ていると言われましたから。僕は僕なのに。それで、顔で見せるのではなく、『この人にこんな感情が表現できるんだ』という反応を引き出さなければならなかったんです。20代の時に強烈な映画や実験的なキャラクターをわざと多くやったのもそのためです」

しかし皮肉なことに、作品を重ねれば重ねるほど、チュ・ジンモは過酷な世界でもカッコよくならざるを得ない男らしいキャラクターに特化していった。初恋の人のために命を投げ出すことをためらわない「愛 サラン」の純情男や、「男たちの挽歌」をリメイクした「男たちの挽歌 – A BETTER TOMORROW」でのスーツが似合うボスのように、彼の武器は“素敵な男”だ。

「与えられた役柄がみんな男らしくて、それを表現した時に認められるから、そんな作品しか入ってこないんです(笑) 他のジャンルに挑んでみたい気持ちは山ほどありますが、俳優は選ばれる職業ですから。特別に『俺、変わるぞ』と思うより、与えられた役の中で少しずつでも違う感じを見せようと努力しています」

「GABI / ガビ-国境の愛-」のイルリッチは、チャン・ユンヒョン監督の全面的な指揮のもとでチュ・ジンモが作り出したような人物だ。愛国という大きな価値より、“俺の女を一生傍で守る”ことが一番の課題である男は、以前彼が演じた熱血男子らに似ているが、その中にはチュ・ジンモ自身が一番多く盛り込まれている。

「シナリオでイルリッチというキャラクターはそんなに重要な役ではなかったです。多くの部分が空白でした。そして、どんな映画よりも監督と非常にたくさん話して論争しました。アイデアもたくさん出しました。自慢っぽく聞こえるかも知れませんけど、僕が出る部分はセリフまで全部僕のアイデアが反映されました(笑) だからこそ、負担に感じるところもありますが、演技とはまた違う喜びを感じることができました」

そのため、馬に乗って空中蹴りをするイルリッチは、依然として乱暴な世界に属しているが、“恋をするとその人しか見えなくて辛いこともある”チュ・ジンモに似た一途な思いを持っている。また、彼が選んだ以下の映画が“愛という単語が好きな”彼に似ているのは当然のことだろう。

 

チュ・ジンモがおすすめする「自分の中の感性を引き出す映画たち」

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1.「愛と青春の旅だち」(An Officer And A Gentleman)
1983年/テイラー・ハックフォード

「映画というジャンルが持つ力があるんですよ。人生や考え方も変えられます。何より夢を見させてくれるじゃないですか。そんな意味で『愛と青春の旅だち』は僕が一番好きな映画です。小学生の時に見たんですけど、この映画を見て感覚的なものをたくさん学びました。今考えても不思議です。友達はめんこ遊びしていたのに(笑) 最後のハッピーエンドもとても素敵ですよね。叶えられなかったことを叶えられるし、希望を与えてくれるじゃないですか。こんな映画にぜひ一度出演してみたいです」

海軍生徒ザック(リチャード・ギア)と女子工員のポーラ(デブラ・ウィンガー)の愛はよくあるラブストーリーの展開を繰り広げるが、彼らがハッピーエンドを迎える瞬間だけはどんな瞬間よりも特別だ。映画は現実を映す鏡でもあるが、現実では不可能だが起こって欲しい事を実現してくれる舞台にもなる。「愛と青春の旅だち」のように。

 

チュ・ジンモがおすすめする「自分の中の感性を引き出す映画たち」

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2.「ジョー・ブラックをよろしく」(Meet Joe Black)
1998年/マーティン・ブレスト

「恋愛映画が好きです。数日前、再び見た映画が『ジョー・ブラックをよろしく』です。ブラッド・ピットが血気盛んだった頃、もっとも緻密な演技を見せてくれました。僕は基本的に理性的なものより、感性的なものの方がもっと好きです。映画も共感できて、強い感情を与えてくれることが大事だと考えています。男から見たらよく“あ、退屈だ。眠たい。つまらない”と言いそうな映画も、別の視点から見ると温かくて、人の心が感じられるんです。この映画みたいに」

ブラッド・ピットがカッコよくなかった時があるのだろうか。役者としても、人間としても完璧な現在からもう少しさかのぼって行くと、未完成だからこそ魅力的だった時代のブラッド・ピットに出会える。「ジョー・ブラックをよろしく」はそんな彼のセールスポイントをうまく活用した作品。天使に近い死神として、これほどまでに美しく見せられる人物は、彼以外にいるだろうか。

 

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3.「ラブ・アクチュアリー」(Love Actually)
2003年/リチャード・カーティス
「冬が訪れると、家でいつも見ている映画です(笑) DVDも毎年1枚ずつ買って、今は家に4枚もあります。温かくて、悪役がいないところが良いです。愛という単語が好きなんですけど、『ラブ・アクチュアリー』には様々な人の色んな愛の形が盛り込まれています。ラブストーリーにおける詰め合わせギフトセットみたいな映画と言いましょうか。僕が演じたキャラクターたちも全部インパクトがあって強いんですが、この男が何でそうしたかと思えば、全部愛のためなんですよ。だから、もっと引かれるようです」

「ラブ・アクチュアリー」には切ないストーリーも、心苦しい愛もあるが、様々なカップルたちのラブストーリーを見終えると、誰でも良い気分になるだろう。短い間一緒に過ごした出会い、愛することからお互いの言葉を学ぶ二人、好きな部下の家を探してさ迷う総理大臣の姿は、それがファンタジーだとしても愛おしい。

 

チュ・ジンモがおすすめする「自分の中の感性を引き出す映画たち」

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4.「ゴッドファーザー」(The Godfather)
1977年/フランシス・フォード・コッポラ
「20代、血気盛んだった頃見た『ゴッドファーザー』シリーズは、男性俳優なら誰でも一度はこんな役をやってみたいと思ったはずです(笑) 役者生活を送っている時も、その前に準備していた頃も、この映画を観てお手本にして、自分流にセリフも真似してみた映画なんです。たくましいキャラクターの根幹となる映画なので、キャラクターの外から見えるより、漂うイメージから出る、近寄りがたいオーラをたくさん参考するようになりますね」

誰もが知っていて、誰もが語る映画史の教科書。家族と組織を守るために、強くなろうと生にしがみついた男は、結局冷酷な生き方のため、最愛の家族を失い、その悲劇と復讐は世代を超えて続いていく。この簡単なあらすじの中には、人間の感じられる悲劇が全て盛り込まれている。

 

チュ・ジンモがおすすめする「自分の中の感性を引き出す映画たち」

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5.「ブレイブハート」(Braveheart)
1995年/メル・ギブソン
「好きな映画が多すぎて、かえって選びにくいですね。『ブレイブハート』は本当に強烈な記憶として残っていますが、軍隊の二等兵時代に特別上映で観た映画なんです(笑) 観ている間ずっと、何か心がカーっとなって、『ああ、これが映画なんだ』と思いましたね。その当時は最下級の軍人でしたが、動かないでずっと2時間も座っているのが簡単ではなかったはずなのに、映画にはまっちゃって。置かれている状況への負担や古参たちによる圧迫をすべて忘れさせてくれたんですよ。そんな状況で見たからこそ、さらに記憶に残っているみたいです(笑)」

製作と主演、監督を務めたメル・ギブソンにアカデミー賞の作品賞と監督賞を与えた「ブレイブハート」は、典型的なヒーローものだ。スコットランドの伝説の英雄の闘争は、ハリウッドで壮大なアクション物に生まれ変わり、自由を望んだウィリアム・ウォレスを世界中に知らせた。

 

チュ・ジンモがおすすめする「自分の中の感性を引き出す映画たち」

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チュ・ジンモはデビュー以来、全作品で主演を務め、今や安定期に入ったといえる13年目の俳優だが、依然として不安や悩み事が多い。しかし、その悩みからは今後の10年間を熾烈に送ることのできる動力が垣間見える。

「まだ多くの人々に認められたと思えません。マニア層は出来たようですけど(笑) それで、一緒に働く仲間たちが言うんですよ。『一度大ブレイクすれば、あなたが何をやっても付いてきてくれて、お金も稼ぐことができるのではないか』って。そのとき、今まで自分だけが意地を張っていたのかと思ったんです。だからといって、僕がドラマに“コッミナム(花男:「イケメン」という意味)”として出る訳にはいかないですけど(笑) 最近、すごく混乱しています。韓国で俳優として10年以上働いていると、『あ、これが現実なんだ』と思いますね。贅沢な悩みかも知れませんけど、自ら夢見ているものがあるのに、今足踏みをしてるんじゃないかと感じますから」

 

記者 : イ・ジヘ、翻訳 : ハン・アルム、写真 : チェ・ギウォン