イ・ミンホ「作品を通して自分の姿を取り戻したい」

イ・ミンホ「作品を通して自分の姿を取り戻したい」

写真=TENASIA

「シティーハンター」(SBS)のイ・ユンソンは風変わりなヒーローだった。思いがけず、復讐のためだけに育てられたが、殺人でなくちゃんとした復讐の仕方を追及し続ける。そして、孤独に自分の運命を担っていくより、弱いけど平凡な人々の暮らしの中に深く入ることを選んだイ・ユンソンは、ドラマチックに爆発することはなかったが、パワフルなヒーローの姿を見せてくれた。華やかで力強いヒーローとはぜんぜん違うシティーハンターのように、ロマンティックなイメージが固まったイ・ミンホが、イ・ユンソンを演じるとは想像できなかったに違いない。しかし、イ・ミンホは「寂しさをベースに」してキャラクターの本心を掴み、「感情を20話まで持ち続けられるように配分しながら」彼ならではのシティーハンターを完成したという。長い無名の時間を過ごして、絶大な人気を得た後、自分ならではの色を探していこうとするイ・ミンホに会った。

―「シティーハンター」の撮影では、飛んできた破片でケガをするなどかなり苦労したと聞きました。ケガは治りましたか?

イ・ミンホ:爆薬を2回設置したが、爆薬の量が多かったためガラスの破片が飛んできて足をケガした。その傷はほとんど治ったけど、実は今も身体じゅうがアザだらけで満身創痍の状態。それくらい大変だった(笑)

―「シティーハンター」のエンディングでは、義理の父親であるイ・ジンピョ(キム・サンジュン)が死んで、イ・ユンソンは生き残ってドラマが終わりました。このエンディングについてどう思いますか?

イ・ミンホ:イ・ユンソンという人物が持つ雰囲気にふさわしいエンディングだったと思う。もし、イ・ジンピョが死んでイ・ユンソンの人生が明るくなるというエンディングだったら、それはイ・ユンソンらしくない感じがしたはず。イ・ユンソンは決して自分だけ幸せになるような一人よがりにはなれないキャラクターだから。寂しげに車で道路を走る最後のシーンは、イ・ユンソンらしいエンディングだったと思う。走って去った後のイ・ユンソンは、おそらく幸せになったんじゃないかな(笑) 原作のように隠れて暮らすのもありだと思うし。

―最終回でイ・ユンソンはこれまで自分を復讐の道具として育ててきたイ・ジンピョと仲直りをしたとも言えます。イ・ジンピョとの絡みは20話の間ずっと感情投入しなくてならないシーンがほとんどでしたが、そういう演技をするのはどうでしたか?

イ・ミンホ:イ・ジンピョに対する感情がいきなりトーンダウンしたら、視聴者がドラマに没頭できなくなるから、20話の間、彼に対する感情を持ち続けられるようにその瞬間瞬間を分ける作業が僕の中で必要だった。イ・ジンピョは最初から最後まで強く押すばかりの人物だから、そんなイ・ジンピョと対立するためには、強さではなく、違う感じが必要だと思った。それで、イ・ジンピョに出会った時、目に力を入れる代わりに、彼を見て生じる悲しみや怒りをなるべく抑えながら演じようとした。そうやって持ち続けてきたイ・ユンソンの感情は、イ・ジンピョが自分を拉致して育てたという事実を知った後、自害するシーンで爆発する。その後は、イ・ジンピョを理解する姿を表現したかった。

―早くから作品の出演が決まっていましたが、撮影に入る前に考えたイ・ユンソンと今のイ・ユンソンに違いはありますか?

イ・ミンホ:最初は今より憂鬱な姿で始めようと思った。全く笑わない暗い人間がキム・ナナ(パク・ミニョン)に出会い、靑瓦臺(チョンワデ)で働き始めながら明るく変わる姿を見せるんだろうと思った。しかし、その逆だった(笑) 監督と調整していく中で、ドラマはアクションだけだと失敗しやすいから、序盤にラブラインを強調するためにキム・ナナと言い争うシーンを多めに入れた。

―キム・ナナとの関係では、意地悪しながらも、不器用に嫉妬をしたり真面目になったり冷たい姿まで見せるなど、様々な感情を見せてくれました。まるで、これまで重ねてきた出演作からの経験をすべてこの役に注いでいるように見えますが。

イ・ミンホ:キム・ナナと言い争うシーンはどのドラマにもよくある男女の姿だから、自然に演じることができる。恥ずかしくなるシーンの場合は(笑)、チン・ヒョク監督を信じて演じた。きれいで美しい映像を作ってくださる方だから。それに、パク・ミニョンさんは僕がどのように表現してもうまく受け取ってくれる女優だから、気楽に演じることができて、良いシーンになった思う。個人的には、エンディングではイ・ユンソンにより大人っぽく男らしい姿でキム・ナナと向き合って欲しかった。でも、イ・ユンソンがシティーハンターであることをキム・ナナが知ってからは、2人の関係の中で見せられることがあまり多くなかった。イ・ユンソンがキム・ナナにできることは、事が片付くまで待ってくれと言うことしかなかったから。2人のやりとりをもう少し長く伸ばしたら、その前までの緊張感を持ち続けることができたんじゃないかなと、少し惜しい気持ちもある。
「怒りのシーンも落ち着いて表現することができると思う」

イ・ミンホ「作品を通して自分の姿を取り戻したい」

写真=TENASIA

―「シティーハンター」はたくさんの人から愛された「花より男子」(KBS)や「個人の趣向」(MBC)と全く違うジャンルですね。アクションシーンも多くて主人公のキャラクターもこれまでとは違いますが、「シティーハンター」で最もフォーカスを置いた点はどこですか?

イ・ミンホ:登場人物たちとの関係でたまっていく感情を適切に配分することを気にかけながら演じた。例えば、ストーリーが進むにつれて、イ・ユンソンとキム・ヨンジュ(イ・ジュニョク)との関係も変わり、彼らの間の感情がたまっていく。キム・ヨンジュの父親であるキム・ジョンシク(チェ・イルファ)がイ・ユンソンのせいで交通事故に遭い、その後キム・ヨンジュに会った時、台本では、冷たくすぐに背を向ける設定になっていた。でも、キム・ヨンジュとの関係を振り返ってみたら、悪いと思う気持ちも生まれるだろうと思った。自分のせいで誰かがケガをしたのだし、まずは申し訳ない感情が先だろうと思って台本を修正した。ドラマの登場人物たちとのぶつかり合いで生じる感情を逃さず表現したかった。

―そのように、台本のキャラクター設定がミンホさんの解釈と違う場合どんな風に解決しますか?

イ・ミンホ:まずは、自分でじっくり悩む。その後、僕なりの結論を出して後から相談する。今回も一人でたくさん悩んでから監督さんに相談して、僕の考えと何が違うかをよく見た。実際、そうすることが僕の性格にも合っていると思う。普段も悩みができると、一人でたくさん考えた後に周りの人に話すほうだ。

―他のヒーロー物のアクションと違って、イ・ユンソンのアクションは主人公であるにも関わらずアクションが華やかに目立つことがなかったんですが。

イ・ミンホ:それが僕のキャラでもある。何かを見せる時、その感じをあえて強要するより意外性を通して見せるのが好き。たとえば、悲しいシーンだといって感情を無理やり絞り出す必要はないし、怒りのシーンでも落ち着いて表現することができると思う。普段からカッコよさだけが強調される映画やドラマは好きじゃない。だから、激しいアクションシーンと言っても最大限すっきりと、余計なものを入れていない姿を見せたかった。僕が好きなアクションシーンは、スプーンを使ったアクションと、階段でやったアクションのシーン。特に階段でのシーンは、暗く狭い空間で照明一つだけを使って、シリアスで緊張感あふれる感じを表現できた。派手な場面も静かに表現するのが好きだ。

―あまり代役を使っていなかったと聞きました。危険なシーンが多かったはずですが。

イ・ミンホ:80~90%は自分でやった。とても高い所から飛び降りたり、塀を越える部分は代役の方がやったけど、それ以外は僕から進んで演じた。スタッフは僕がやらなくてもいいと言ったが、僕自身が強いてやった。

―イ・ユンソンは復讐のために生きながらも、家族の愛を恋しく思い、社会問題にも関心が高いです。そんな複雑な内面を持つ人物で、外では様々な問題にぶつかりますが。

イ・ミンホ:イ・ユンソンはかなり大きい寂しさを抱えた人物だと思った。復讐という運命に縛られている自分のせいで、他の人が怪我を負わなくてならない現実をとても悲しんで苦しがったりもする。俳優イ・ミンホが、一人でいる時に感じる寂しさを思い出してイ・ユンソンを演じ、ドラマの撮影の間はその“寂しさ”という感情を忘れないようにした。基本的に寂しさという感情を心の中にベースとして置いておいて、キム・ナナ、キム・ヨンジュ、イ・ジンピョに向き合う時、人と状況によってイ・ユンソンが自然に変わっていく姿を表現しようとした。

―イ・ユンソンの復讐の仕方は、復讐を止めて皆が幸せになることです。このような物語の方向性についてはどう思いますか?

イ・ミンホ:イ・ユンソンは、敵を殺す代わりに社会の審判を受けるようにするなど、世論を利用してその人が絶対許されないようにする社会的な破滅を復讐の仕方として選ぶ。これはイ・ユンソンがよく言った「血が血を呼ぶ復讐」という言葉とも通じていて、そのセリフも彼の行動も正しいと思う。そうじゃないと、終わりがないから。ただ、そういう復讐の仕方はいろいろ頭を使わなくてならないから、イ・ユンソン自身が非常に疲れる方法だ。実際、演技をする時はかなり疲れていて、敵5人を一気に始末したくなったりもした(笑)

―復讐の仕方も自分自身が疲れるようなもので、かなりアクションも必要とするキャラクターなのに、そこまで意欲を出せた理由はありますか?

イ・ミンホ:僕一人が主人公である作品は初めてだったので、責任感が大きかった。それで、アクションはもちろん、小物一つ一つにもすべて気をつかって関わるようになった。台本を分析する時も「この部分ではこういう感情だから、こんな風に表現した方がいいんじゃないでしょうか」と徹底的に突っ込んだ。作品の一から十まですべてのことに気をつかった。

―イ・ユンソンを演じながら色んなことを考えたり悩んだりしたようですね。しかし、考えが多くなるとかえって演技が不自然になってしまう場合もあるんですが、演技をする時、これだけはこだわってやるというものがありましたか?

イ・ミンホ:キャラクターの中心をとることが非常に重要だった。イ・ユンソンがどんなことを考え、どんな価値観を持った人物なのか、どのくらいまで感情を表現すればいいのかなどを明確にしておくと、台本が少し遅れたりおかしい方向に流れても影響されず演じることができる。寂しさをベースに抱えながら、怒りを表現してもおかしくないよう、かなり気をつかったと思う。
「俳優としての生活を続ける限り、寂しさの解消は難しいと思う」

イ・ミンホ「作品を通して自分の姿を取り戻したい」

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―ドラマの中でイ・ユンソンは平凡に暮らしたがります。「花より男子」でスターダムにのし上がり、たくさんのファンから愛されている立場から、このキャラクターに共感する点はありますか?

イ・ミンホ:第3者の立場から見てもイ・ユンソンは非常にかわいそうな人間だ。生まれてから望んでもいない人生を送り、親から愛されたこともない。そんなイ・ユンソンが平凡に生きたがるのは当然なことだと思う。

―イ・ユンソンの寂しさを演じる時、俳優イ・ミンホの寂しさを思い浮かべたと話しましたが、一番寂しいのはどんな時ですか?

イ・ミンホ:以前の僕は新しい人に出会うことが好きな性格だった。明るく社交的で人との付き合いも幅広い方だったけど、たくさん愛されてからはそんな性格がかなり変わった。少しでも心地悪い人に会うと避けたり、一年ぶりに会った人にどんな話からすればいいのか分からなくなった自分に気づいて、悲しくなった。時々こうやって暮らすのは正しい生き方ではないのかと考えたりもした。こういった寂しさがどこから来るのかは分からないが、個人的に努力するとしても俳優生活を続ける限り、寂しさの解消は難しいと思う。

―「花より男子」で多くの人に愛されてから、「シティーハンター」で新しい姿を披露して、俳優としての第ニ幕が開けたかのように見えます。「シティーハンター」はミンホさんのキャリアにおいてどんな意味を持ちますか?

イ・ミンホ:今まで僕の名前につけられる修飾語は主に「花より男子」で、一過性のスターというイメージが強かったが、「シティーハンター」で俳優としての可能性を覗かせることができたと思う俳優という肩書きにもう一歩近づけたというか。「シティーハンター」の後、愉快なストーリーだけでなく真面目で孤独な雰囲気の作品も出演依頼が来るようになった。それくらい、演技での幅が少し広くなった感じがする。

―ミンホさんが思う俳優としての可能性はどんなものですか?

イ・ミンホ:感情を自由自在に分けることができるのが本物の俳優だと思う。2~3時間の映画でも、全20話くらいの長い期間続くドラマでも、自分に与えられた時間の中でキャラクターの感情をうまく配分し、感動を与えるのが俳優ではないだろうか。しかし、それは非常に難しい(笑) でも、キャラクターを表現しようとする真実性だけを持っていれば、見ている方も分かってくれると思うし、どんな状況であっても終わりを告げることができる。強くも弱くもなく、その真ん中を表現し、本心を盛り込んだ演技をする俳優になりたい。

―今後はどんな作品に出演したいですか?

イ・ミンホ:少しゆるいキャラクターを演じたい。たとえば、漫画喫茶を行き来する無職の人とか(笑) もしくは、映画「トワイライト~初恋~」のように、想像の世界だけど共感できる役を演じてみたい。

―そんな役を演じてみたくなった特別な理由はありますか?

イ・ミンホ:中学校や高校の頃の僕に近いから。僕はそんな風に過ごしていた。ゆるいキャラでいつもスリッパを履いていたりして(笑) 大人になってそういう部分はなくなったけど、作品を通して昔の自分の姿を取り戻したい。ファンの人たちも僕の本当の姿を見たいと思うだろうし。ゆるい役に扮したら、実体験を生かしてもっとうまく演じる自信もある。

―20代半ばですが、早く歳を取りたいですか?

イ・ミンホ:男優の中には早く30代になりたいと言う方もいるけど、僕は少年と大人の間にいる今の僕がいい。色んな言葉や姿で僕を表現することができるから。30代過ぎてから本当の魅力が出てくるのかもしれないが、僕は自分の中から少年の姿が消えたら何だか寂しくなると思う。実は今も時間が流れないでいてほしい(笑)
記者 : ハン・ヨウル、翻訳:ナ・ウンジョン