【THE SCENE】「ティティ」と呼ぶミドの声が聞えそうな「男が愛する時」のテサンとミドの思い出の空間の中へ

「ティティ」と呼ぶミドの声が聞えそうな「男が愛する時」のテサンとミドの思い出の空間の中へ

「ティティは寒くないの?」今でも耳に残るミド(シン・セギョン)の小さな声。テサン(ソン・スンホン)に言った、このさりげなく温かい言葉が長く記憶に残る。時々、誰かを愛する気持ちは相手の同意を求めずに始まってしまう。ある瞬間から相手が気になることで、その感情が始まり、ついに心臓にその人が刻まれる。そのような面で、愛は何かを取りとめもなく書き始めたが、最後まで書き綴れない時と似ているのかもしれない。主語は“私”で目的語は“あなた”、最後の単語は“愛している”だったはずなのに、突然、“彼女”や“彼”が現れ、とうとう述語が誰のために存在するべきなのか分からず、途方にくれてしまう。MBC「男が愛する時」の主人公たちもそうだった。相手の許可もなしに始まってしまった感情が、複雑に絡み合い、居場所を見つけることができなかった。自分への気持ちだと思っていたものが他の人に向かっていた時、どうしたらそれをもう一度自分のものに取り戻せるだろうか。そんなことが可能ではあるだろうか。愛する人の前では、ただ10歳の少年のように純粋だったテサンと、彼から強烈に愛されていたミトの話。彼らの物語が盛り込まれているこの場所には、幸せだったひと時が、青春が、そして愛が盛り込まれていた。

「ティティ」と呼ぶミドの声が聞えそうな「男が愛する時」のテサンとミドの思い出の空間の中へ

「本が主人を待っています」、“ソ氏書房”の片隅に書かれている文章だ。誰かから捨てられた古本が他の誰かにとっては大切な一冊になるように、人もそうなるという優しい気持ちが伝わっている。17歳に母親と世の中から捨てられたテサンが22年という長い歳月を重ね、ミドという女性を愛してしまったように。ミドの家であり、テサンとミドが初めて出会った“ソ氏書房”は、本物の古本屋ではなく、仁川(インチョン)にある一般家庭のお家だ。倉庫として使っていた1階を制作陣が本をぎっしり詰め、書房に作った。ミドが窓を開けて顔を出していた2階は、実際の家主が住んでいるところだ。撮影があるたびにミド家族に貸してくれた。

“ソ氏書房”には学生時代のミドが耐えなければならなかった重い現実や挫折、絶望が盛り込まれている。7年後、テサンに出会って感じた幸せや喜び、その間経験した危うい感情も凝縮されている。闇金業者に向かって叫んだり暴れたりするミドを見ながら、自分の幼い頃を思い出したテサンも同じだった。乱暴で冷酷だった過去の彼の姿から一人の女性だけを愛するようになった今までのすべての出来事を、“ソ氏書房”の本は記憶している。ミドにキスしながら幸せな時を過ごしたロマンチックな空間であり、ジェヒ(ヨン・ウジン)やミド、テサンのすれ違った愛の前兆を知らせてくれた緊張感あふれる場所でもある“ソ氏書房”。誰かと繋がりたかったというキム・ヨンスの小説の一節を読んでいたテサンの声が、依然として“ソ氏書房”の周辺を漂っている。

• ソ氏書房
東仁川(トンインチョン)駅の北広場のバス停で112番、もしくは6-1番のバスに乗った後、“ソンヒョンアパート”というバス停で下車。徒歩5分。 (住所:仁川広域市 東区 アンソン路 113通り)

「ティティ」と呼ぶミドの声が聞えそうな「男が愛する時」のテサンとミドの思い出の空間の中へ

「愛を書くなら鉛筆で書いてください。書く途中間違えたら、消しゴムできれいに消さなければならないから。最初から濃いインクで愛を書くと、消すのが大変だから」チョン・ヨンロクの「愛は鉛筆で書いてください」の歌詞だ。ミドに向けたテサンの愛も濃いインクで描かれていたように、その痕跡も簡単に消すことはできなかっただろう。

愛し始めた恋人のように彼らの愛を描き入れたドラマの中の場所は、MUSTOYカフェの合井(ハプチョン)店だ。そして、ここは“ティティ”という、可愛い響きがするテサンのニックネームが誕生した空間でもある。MUSTOYカフェは、映画館で最後に見た映画が「友へ チング」(2001)であり、中学校3年生の冬休み以来、遊園地に行ったことがないというテサンのために、ミドが計画したデートコースの1つだった。白い陶磁器の人形にお互いの顔を描き入れ、世の中にたった一つしかない作品を作ることができる独特なカフェだ。「あなたの目と鼻、そして口がこんな形をしているんだ」とじっと眺めながら、長く記憶に残る思い出をプレゼントすることができる。実際に、テサンとミドのようにカップルたちが予約してお店を訪ね、自分たちの姿を残して帰る。絵を描く途中に失敗したり絵が気に入らない場合、いくらでも描き直すことができるMUSTOYは、テサンのことを思い浮かばせる。テサンがミドを愛した瞬間、短い間ではあるが彼は過去の姿から抜け出し白紙になり、その上にミドに向けた愛の色で埋め尽くした。

•MUSTOY 合井店
地下鉄6号線の合井駅で降りて5番出口。徒歩5分。 (住所:ソウル市麻浦区(マポグ)西橋洞(ソギョドン) 394-23 2階 / お問い合わせ:070-8267-8051)

「ティティ」と呼ぶミドの声が聞えそうな「男が愛する時」のテサンとミドの思い出の空間の中へ

普通のカップルのように遊園地に行ったり、カフェで特別な思い出も作ったので、もう残ったことは桜通りの散歩だ。薄紅色のポップコーンが空に撒き散らされたような美しい風景の中を、テサンとミドが歩いた。やんちゃな少年のように桜の木を揺らしてミドに桜の花びらを散らしながら笑っていたテサンの純粋な微笑みは、春の日差しのように温かかった。「毎日、朝と夜、一年の間ずっと君のそばにいたい」とミドに告白したテサン。“ソ氏書房”で「付き合おう」「会おう」でもなく、「一緒に住もう」と話したその瞬間から、彼はずっとミドにこの言葉を言いたかったのかもしれない。プロポーズするにはこの上ないロマンティックな場所はないはずだから。
テサンがミドにいい夫になると話したこの場所は、全羅北道(チョルラプクト)鎮安(チナン)にあるマイ山の桜通りだ。他の地域より桜の開花日が遅いが、広い範囲で桜が咲く名所であるため、4月中旬になると多くの観光客が足を運ぶほど有名だ。そのため、このシーンの撮影は人波が押し寄せる桜祭りの開始日の前日に行われた。若い男女が手をぎゅっと握り歩くのにとっておきの2.5kmのマイ山の桜通り。一番遅く咲きながらも一番華やかに咲くここの桜は、大人になって愛というものを分かるようになったが、誰よりも情熱的にミドを愛したテサンの姿とよく似ている。短かったが強烈な美しさを引き出したテサンの愛がここの風景と重なって見えるのは、ただの偶然ではないだろう。

・鎮安 マイ山の桜通り
マイ山道立公園に到着後、南駐車場の方面に行くと、桜通りに繋がる。 (住所:全羅北道 鎮安郡 馬霊面(マリョンミョン) 東村里(トンチョンリ)76-2 / お問い合わせ:063-430-8752~5)

記者・写真:イ・ジョンファ、写真提供:MBC、BLISS MEDIA、MUSTOY 合井店、鎮安君庁、翻訳:ナ・ウンジョン、日本語編集:チェ・ユンジョン